倉庫の扉が閉じた瞬間、湿った空気が張りつめた。 男は三十人。逃げ場はなく、黒田は薄く笑って言った。 「ここに30人いる、逃げ場はないぞ」 だが、水原由依は怯まない。 「では30人分、順番に片付けますね」 その声に、場の空気が一度だけ止まった。 由依は桜坂商店街の一ノ瀬豆腐店で、トメを守るためにここへ来た。黒田たちの脅しは、再開発の名を借りた地上げだった。父の死、清一郎の遺した手紙、明星辞書の紋章。すべてが一本の線でつながり始めていた。 そして三分後、倉庫に立っていたのは由依ではなく、血の気を失って床に崩れ落ちた三十人の男たちだった。 黒田の顔からも、初めて色が消えていた。