突然、父は家から消えた。 四歳の私は理由も分からないまま、二歳下の妹・望みと抱き合っていた。やがて母も私たちを顧みなくなり、男を迎えるたびに姉妹は外へ追い出された。鍵のかかった家へ戻れず、寒い夜はベランダで毛布にくるまって過ごしたこともある。三度目の放置の後、私たちは救出され、施設へ。その後、温かな里親夫妻・浩司さんと陽子さんに引き取られた。声を失いかけた私も少しずつ笑えるようになり、望みも元気を取り戻した。やがて私は教員に、望みは法学の道へ進んだ。そんなある日、母の代理人だという弁護士が現れた。母は復縁と養子縁組を求め、私たちを呼び戻そうとしていたのだ。だが望みは、傷痕を見せて静かに拒絶した。私たちに家族はもういる。 帰り道、望みは言った。「虐待を減らす仕事をしたい」――私は強く頷いた。