夫の口から出た言葉は、私の想像をはるかに超えていた。 「そろそろ、全財産を唯一俺の血を引く愛人の子に残す手続きをしたいんだ」一瞬、部屋の空気が凍りつく。 「愛人の子って、何?」 震える声で尋ねた私に、夫は平然と答えた。 「ああ、ゆりとの子供だ」その名を聞いた瞬間、胸が潰れそうになった。ゆりは、私の幼馴染だった。 十七年間、半身麻痺の夫を支え、娘と三人で必死に家庭を守ってきた。その年月を、彼は一言で踏みにじったのだ。「私たちのこと、最初から本当の家族だと思ってなかったの?」 夫は視線を逸らしながら、「血の繋がりは大事だろ」と言った。その瞬間、私の中で何かが静かに壊れた。 私は涙も見せず、ただ立ち上がる。 「好きにすれば? 私たちは今日中にここを出ますので」「え?」と驚く夫の顔を見て、私は初めて冷たく笑えた。 捨てるつもりでいたのは、あなただけ。 私と娘の新しい人生は、ここから始まる。