68歳の義母と買い物の最中、夫のたかしから突然電話が入った。 「母さんが交通事故で入院した! しばらく帰省する」――その声は切迫していた。だが、私の隣には、さっきから元気にケーキを選んでいる義母がいる。 私は思わず息を呑み、スピーカーに切り替えた。義母も表情を固くし、静かに私を見た。 「お母さん、大丈夫なの? すぐに向かってあげて」 そう返すと、たかしは妙に慌てた声で「真由美は来なくていい、仕事があるだろ」と言い切った。その瞬間、私たちは悟った。 彼は何かを隠している。事故でも入院でもない、別の事情があるのだ、と。結局、たかしは一か月も実家に戻ったまま連絡を絶った。 そして放置の末に明らかになったのは、義母の病気ではなく、彼自身の都合だった。 事実を知った義母は静かに笑い、「自分で蒔いた種ね」と一言。 私は、あの焦った電話の真相に、ただ呆れるしかなかった。