私は四月から近所の飲食店でランチタイムのホールをしていました。三歳の子どもは普段保育園ですが、夏休みだけは私の実家と夫の実家を一週間ずつ回ります。八月十日、お盆も働く予定でいた私に、あまり接点のないパート先輩Aが突然言いました。 「帰省するから車を貸して。ガソリンも入れておいて」 夫が大切にしている車だと断っても、Aは聞きません。店長が止めても、翌朝六時前にA一家がインターホンを鳴らし、「約束どおり借りに来ました」と笑ったのです。 夫と駐車場へ向かうと、そこにあったのは車検中の代車でした。Aは青ざめ、さらに十五日、マンションの来客駐車場で車を壊して騒いだと管理人から連絡が入ります。相手は別人のB家。結局、Aは退職し、夫は「これで終わればいい」と静かに言いました。