「親を呼んでこい、ガキが」人気のない駅前ロータリーに、男の怒声が冷たく響いた。午後十一時、終電も去ったあとの空気は張りつめ、四人のチンピラが凛を取り囲む。だが彼女は怯えなかった。 「親はいません。ただ、部下なら3000人います。何人お呼びしましょうか」凛が静かにそう告げ、スマホを開いた瞬間、男たちの表情がわずかに揺れる。彼女が選んだのは、ただ一人の番号だった。コールがつながると、短い一言だけ返る。 七分後、黒いセダンが滑り込んできた。降り立ったのは、グレーのコートを着た黒川宗一郎。男たちはその名を聞いた途端、顔色を失う。警備業界最大手・黒川グループの総帥が、目の前の高校生に頭を下げたのだ。 「お前が決めろ」 その言葉に、凛は静かに告げた。 「今日は、帰ってください」 許すか、許さないか。その選択は、彼女の手にあった】【。