明日、私は夫と離婚する。十五年も子宝に恵まれず、気持ちはすれ違い、寝室も会話も遠ざかっていた。最後の夜だけはきちんと終わらせようと、高級寿司店で夫を待ったが、彼は来ない。既読もつかず、胸の奥に冷たい不安だけが積もっていく。 ひとり寿司を口にした私に、隣の中年夫婦が声をかけた。彼らは夫の命の恩人だった。過去、生活に追い詰められ自暴自棄になっていた二人を、夫が公園へ連れ出し、「生きていればきっと良いことがある」と救っていたのだ。さらに夫自身も、子供ができない原因は自分にあると知り、私の幸せを思って離婚を受け入れようとしていたと聞かされる。 涙のまま家に戻ると、机の上のパソコンに彼の日記があった。私もまた、彼を愛している。ただ、寂しさに耐えられなかっただけだと悟る。私は公園へ走り、泣いていた夫と再会した。誤解は解け、二人は離婚届を破り捨て、月明かりの下で、もう一度生涯を誓い合った。