「貧乏な母親だ」と義姉の巡りは鼻で笑った。 質素な服を見下し、「娘の嫁ぎ先に失礼」とまで言い放つ。美咲は怒りをこらえ、「母を侮辱しないで」と返すしかなかった。だが母は静かに微笑み、「人は服ではなく、どう人に接するかで見える」と告げた。翌日、M&A会議の会議室。巡りは買収側の巨大企業の会長を待ちながら、肩書と地位の話で優位を誇ろうとしていた。ところが入室してきたのは、昨日“貧しい母親”と笑ったその女性だった。しかも、会長席に座るのは彼女――神崎会長だった。会議は容赦なく進み、経費の重複申請、承認記録、KPI修正、資金の流れまで次々と暴かれる。巡りの管理権限はその場で停止。昨日の侮辱が、権力の報復ではなく、自らの不正の清算だったと知った巡りは、顔面蒼白で立ち尽くした。美咲はただ一言、「私の人生を、もう誰にも決めさせない」と言い切った。