葵の結婚式当日、母・美咲は静かに娘の晴れ姿を見守っていた。だが、親族席に案内したはずの玲子が、彼女の地味な服装を見て嘲る。「貧乏人は末席へ」と告げ、末席への移動を強いたのだ。美咲は一言も言い返さず、黙って席を移った。娘の門出を汚したくなかったからだ。しかし、その沈黙は長く続かなかった。司会者が支配人を伴って現れた瞬間、空気が一変する。支配人は美咲の顔を見た途端、深々と頭を下げた。「黒川会長、本日はご臨席ありがとうございます」――会場が凍りついた。末席に座る“貧しい母”と嘲られた女性こそ、黒川グループの会長だったのだ。玲子は顔面蒼白になり、先ほどまでの軽口を必死に取り繕う。しかし美咲は揺るがない。ただ娘を祝うために来ただけだと告げ、席の上下で人を測る姿勢にこそ本当の品格が現れると静かに示した。葵は涙をこらえながら、母の贈り物を胸に抱きしめた。