松田恵子は、東京湾を望む高級ホテルの玄関に、薄い灰色の古い着物姿で立っていた。息子・松田駿の結婚式の日なのに、周囲の華やかさの中で彼女だけが場違いに見える。受付の早川里奈と母・美代子は、恵子の姿を見た瞬間に顔をこわばらせ、彼女を親族席ではなく厨房近くの末席へ追いやった。駿も母と目を合わせながら、すぐに視線を逸らす。写真撮影にも恵子は呼ばれず、「遠い親戚」と扱われたその瞬間、彼女の胸の中で何かが静かに閉じた。だが、この式の費用の大半は、恵子が支払っていた。亡き夫と築いた松田不動産ホールディングスの名誉会長という正体が明かされると、式場は凍りつく。弁護士・森山が契約書と振込記録を示し、里奈たちが母を侮辱し、支援金を都合よく使っていた事実も暴かれた。