「20歳の彼女が妊娠した。だから離婚して出ていけ」 夫・翼の突然の告白に、私は一瞬だけ息をのんだ。だが次の瞬間、棚から離婚届を取り出し、冷静に答える。 「わかった。娘だけ連れていくね」 すると翼は顔色を変え、「息子二人も連れて行け」と怒鳴った。私は静かに首を振る。 「無理。だって、その子たちは私の子じゃないもの」 看護師の私、緑が翼と結婚したのは二年前。連れ子のはじめと純、そして実の娘カナ。最初は冷たかった二人も、私が作る食事や気遣いで少しずつ心を開き、やがて誤解も解けた。 だが翼は裏で息子たちに、私が前の妻を追い出したと吹き込んでいた。真実を知った二人は激怒し、最後には翼を床に押さえつける。 そして私は知る。翼の「妊娠した彼女」は嘘で、彼は私を家政婦代わりにしていただけだったのだ。 私は娘を連れ、実家へ。失ったのは夫だけだった。守れた家族は、確かにあった。