母の四十九日の席で、兄の光一と兄嫁の澄子は親族の前で私を見下ろした。 「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 そう言い切り、兄は「長男の俺が全部もらう」と遺産を独り占めすると宣言した。私は静かに頭を下げ、「はい、出ていきます」とだけ答えた。だが、その夜から空気は変わり始める。母の六畳間で開いた十年日記には、私が朝四時から作った食事、通院の付き添い、入院費を支えた記録が淡々と残っていた。領収書も、手すりの修理代も、十年分すべてが箱に積まれている。さらに澄子は、母の着物もミシンも仏壇の物まですべて売り払おうとした。だが、キャッシュカードの行方、七年間の通帳の真実、そして親族たちの前で暴かれた管理の実態が、彼らの欲深さを容赦なく照らし出していく。 四十九日に奪ったつもりの遺産は、やがて兄嫁の手から静かに崩れ落ちた。