社員旅行当日、搭乗口で私だけ航空券がないと告げられた。 黒田部長は肩をすくめ、「手配し忘れた」と笑い、相馬も私の亡き母を侮辱して周囲まで追従した。誰も私を見ない。私はただ、鞄の底で古びた名刺を強く握りしめ、無言で空港を出た。母が遺した、その一枚だけが私の支えだった。帰宅後、社長からの着信が鳴り止まない。 留守電には焦り切った声が重なり、翌朝の明星グループとの最終契約が、私抜きでは成立しないと知ったのだ。しかも、その相手は七百億円規模。私は静かに通話に出て、黒田の横暴と、母の名刺に秘められた縁を思い返す。翌朝、本社は崩壊寸前だった。 明星グループは全面停止を通告し、黒田の虚偽も相馬の不正も、後輩が記録した動画とデータで一気に暴かれる。そこへ現れた陳会長は、私の母への恩を語り、黒田を冷たく断罪した。 そして一夜明けると、会社は七百億の取引停止で実質崩壊。私を踏みにじった者たちは、すべてを失った。