りくりゅうが世界1になり、世界が大称賛した理由は、奇跡ではなく“積み重ねの精度”にある。氷上わずか数センチを、陸は信じられないほど美しく滑り、龍一の放つ力でふわりと舞う。3メートルを超える高さで優雅に回転し、完璧に着地する陸。その身体が回りながら降りていく間、龍一は片手で支え切る――スローで見れば分かる。手品など一切ない、ただ技術と信頼だけだ。演技の締めでは、龍一が少しオーバーに決めポーズを取り、陸はいたずらな笑顔で応える。氷上の緊張を遊び心に変える余裕が、王者の証明になる。しかし本当の強さは、崩れた瞬間に現れる。うまくいかず涙をこぼす陸を、龍一が静かに慰める。ダダをこねるように手を握り返し、言葉より先に安心を渡す。点数が出た瞬間、誰より心配していた龍一が遅れて喜び、陸は時間差でこみ上げる感情に、思わず口が開く。世界1とは、この二人の関係そのものだった。