毎朝、決まった道を三十分歩いているのに、体はなぜか重くなる――。 そんな疑問を抱えた高齢者は少なくありません。長野県松本市の田村誠治さんは、四十三年続けた郵便配達を退職後、散歩を始めました。しかし、歩けているはずなのに起き上がる理由が見えず、朝の動きは鈍っていったのです。一方、石川永治さんは歩数管理に熱心でしたが、体調を崩した途端、外出そのものが止まりました。違いを分けたのは、運動量ではなく「動く理由」でした。 田村さんは妻・春恵さんの言葉をきっかけに、玄関の調整や植木への水やりなど、自分で終えられる用事を持つようになります。すると、短い動きでも気持ちは軽くなったのです。老後の体を守るのは、歩くことだけではありません。誰かのため、何かを終えるため、今日一つ残す――その理由こそが、長寿を支える新常識なのです。