席替えの日、あざみは最初から不満げだった。 「え、佐野崎の隣? 無理、こんな貧乏臭いネクタイの人と並ぶなんて嫌」 露骨な拒絶に、周囲は一瞬静まり返る。だが佐野崎は動じず、「そんなに嫌なら変われば?」と淡々と返した。ところが、あざみが望んだ“隣”は、実は誰もが少し身構えるすずらんだった。彼女は金持ち育ちで、しかも自分の席の周囲を誰より早く磨き上げていたのだ。机も椅子も床も、異様なほど輝いている。 「同じ空気に近づけておいたの。これなら落ち着くでしょう?」 その執着に、あざみは言葉を失う。やがて授業中、あざみは退屈しのぎにスマホを取り出した。 だが次の瞬間、すずらんが静かに言う。 「見えているわ。天井に反射しているもの」 天井まで磨き上げた結果、自分の行動まで映っていたのだ。 “隣は嫌”と主張した彼女の末路は、誰よりも逃げ場のない席だった。