月曜の朝、佐藤直樹はいつものように無口なまま、商品管理部のデスクで伝票を黙々と処理していた。会社での彼は地味で目立たない存在だ。だが、直属の上司・神谷玲子だけは違う。完璧で冷徹、部署では「氷の課長」と恐れられていた。そんな彼には、誰にも言えない秘密がある。週末になると、ショッピングモールの屋上でローカルヒーローの着ぐるみを着て、子どもたちに笑顔を届けていたのだ。ところがある日、ショーの後でマスクを外した瞬間、背後から聞こえた声に血の気が引く。そこにいたのは、私服姿の神谷課長だった。翌日から課長の態度は変わり始める。ヒーロー活動を「危険」と言いながらも、子どもたちの笑顔を知り、怪我をした佐藤を本気で心配する姿を見せた。そのすれ違いの中で、佐藤は気づく。氷のように見えた彼女は、ただ不器用なだけだったのだ。やがて休日の会場で、課長は真っ赤な顔で「次の日曜日、空けておいてください」と告げる。厳しい上司のはずなのに、その瞳はもう、週末ヒーローの彼だけを見つめていた。