捨てられた直後だった。 その小さな子ネコは、まだ温もりの残る箱の中で、じっと周囲を見つめていた。今日が始まったばかりなのか、それとも終わったのかも分からない。ただ、そこに残っていたのは、薄く震える呼吸と、頼りない瞳だけだった。「いつか君の笑いを歌う、と、いうのなら。」 誰かの言葉のように、やさしくも切ない響きが空気に残る。けれど、その瞬間の子ネコには、歌も未来もまだ遠い。ぼくには何もない――そう言いたげに、静かに身を縮めていた。捨てられた直後だったからこそ、その沈黙は痛いほど鮮明だった。小さな命が、たったひとつの居場所を失い、次の誰かを待っている。その姿はあまりにも無防備で、見る者の胸を強く締めつける。