かつて道頓堀は、大阪人が芝居や演芸を楽しむ文化の街だった。中座や角座などの劇場が並び、歌舞伎や笑いを求めて地元の人々が集まる場所だった。しかし時代の流れとともに劇場は姿を消し、最後まで残った大阪松竹座も閉館を迎え、長い歴史を持つ「芝居の街」は大きな転換点に立たされた。一方で、道頓堀は外国人観光客によって新たな活気を得た。たこ焼き、焼肉、土産物店、ドラッグストア、巨大看板の撮影スポットが並び、多くの観光客で賑わっている。しかしその姿は、文化を育む街から「大阪らしさを消費する観光地」へ変化したとも言われる。問題は、インバウンドだけが原因ではない。梅田の発展や娯楽の多様化によって、大阪人が南へ足を運ばなくなった流れは以前から存在していた。そこへ観光需要が入り、地元向けの店が減り、観光客向けの店舗が増える循環が進んだ。昔の道頓堀には、本屋、喫茶店、立ち飲み、劇場などが混在する雑多な魅力があった。今は外国人には「大阪らしい街」に見えても、昔を知る大阪人にはどこか違和感のある場所になっている。