東京と横浜の中間に位置する大森は、一見すると通過してしまいそうな静かな街に見えます。しかし、その土地を深く掘り下げると、日本の近代史を映し出す驚くほど濃密な物語が隠されています。大森と聞けば、多くの人が大森貝塚を思い浮かべるでしょう。1877年、動物学者エドワード・モースが鉄道の車窓から発見したこの貝塚は、日本考古学の出発点ともいえる存在です。ところが、大森の歴史は貝塚だけではありません。現在の平和島には、かつて戦時中に連合国軍捕虜収容所が存在していました。過酷な環境の中で多くの捕虜が苦しみ、終戦後には東条英機ら戦犯が一時収容される場所にもなりました。「平和島」という名前には、悲しい過去を乗り越え、平和を願う意味が込められています。