台風接近の中、出張へ向かうことになった渡るは、妻のまゆを安心させるため「危険な場所には近づかない」と約束した。出張が多く、家を空ける日々に悩んでいた彼は、将来的には転職して夫婦の時間を増やしたいと考えていた。しかし、出発から数日後、まゆのもとに一本の電話が入る。「ご主人は亡くなりました」電話の相手は、夫の部下を名乗る東条ひなこだった。現地では大雨による河川の氾濫や土砂災害が発生し、渡るは取引先へ向かう途中、濁流に巻き込まれたという。だが、まゆは簡単に受け入れなかった。「遺体が見つかっていないなら、まだ生きているかもしれない」と、危険な被災地へ向かう決意をする。現地で必死に捜索を続けたまゆは、身元不明の患者が入院している病院にたどり着く。そこには、渡ると特徴が一致する男性がいた。しかし、その病室には、なぜかひなこが付き添っていた。問い詰めるまゆに、ひなこはついに本性を現す。「渡るさんは私のものよ」実はひなこは以前から渡るに恋心を抱いており、彼の転職話をきっかけに絶望していた。そして災害の混乱に乗じ、渡るが記憶障害になったことを利用して、自分を恋人だと思わせようとしていたのだ。しかし、まゆの執念と夫を思う気持ちは真実を暴き、渡るは無事に救出される。ひなこは病院で騒ぎを起こしたことで警察に連行され、会社も解雇となった。自然災害の恐ろしさだけでなく、人の心に潜む悪意の怖さを思い知らされた出来事だった。渡るはその後、出張の少ない会社へ転職し、夫婦は再び穏やかな時間を取り戻していく。