「結婚なんて古くさい価値観」――そう言い切った花子は、大手商社で昇進を重ね、年収は一千万円超。都心の高級マンション、海外旅行、潤沢な貯金と年金見込み。四十代も五十代も、彼女は“自由”を疑わなかった。しかし六十代、景色は一変する。友人は孫を優先し、誘いは「また今度」で途切れる。膝を痛め、通院の待合室で付き添いの家族に囲まれながら、花子だけが独りだった。追い打ちは隣人の孤独死。白い布のストレッチャーを見た夜から不眠と動悸が始まり、スマホを握っても――誰にも電話できない現実が刺さる。一方、元教師の美咲も六十五歳で転倒し骨折。兄弟に助けを求めても「独身で自由だっただろ」と拒まれ、介護費は貯金を容赦なく削った。金があっても孤独は埋まらない。老後の“自由”は、支えのない地獄と紙一重だった