僕は中学卒で、幼少期は父の借金で貧乏な暮らしをしていた。母と二人ぼっちで、ボロボロのアパートでの日々。当時の僕は、腹を空かせてばかりだった。そんな僕が三十歳を迎え、母の還暦祝いに、彼女の大好物である鰻を高級店でご馳走することにした。当日、少し緊張しながらお店に向かうと、優雅な女将が出迎えてくれた。そして母と二人、最高の鰻を楽しんだ。しかし、その店で取引先の専務に遭遇。「中卒がこんな店に来るなんて」と軽蔑の言葉を投げつけられ、僕は青ざめた。その様子を見ていた見知らぬ男性が、実は取引先の社長だったことに気づく。社長は専務を厳しく叱責し、すべての経費を負担してくれた。この出来事で僕たちは救われた。社長と女将の心意気に感謝し、いつかまた母をこの店に連れて行こうと心に誓った。