人は幼い頃、兄弟は永遠に自分の味方でいてくれる存在だと信じています。しかし、長い人生の中で、その絆が少しずつ変化していくことがあります。岩手県遠野の小さな集落で暮らす75歳の田中澄子さんは、姉の葬儀に行きませんでした。「行けなかった」のではなく、「行かなかった」のです。かつては何でも分かち合った姉弟でしたが、長い年月の中で積み重なったすれ違いが、心の距離を広げていました。澄子さんは幼い頃、北海道夕張の炭鉱町で五人兄弟と貧しい生活を送りました。一枚の布団で眠り、一本のさつまいもを分け合った日々。特に八歳年上の姉は、親代わりとなって弟妹を守ってくれました。「お姉ちゃんがいるから泣かないで」と言われた瞬間、澄子さんは兄弟の絆を一生信じようと決めたのです。