一九世紀、アジアの大国であった清が阿片の侵入により崩壊の道をたどる中、日本はその破壊的誘惑から逃れることができました。イギリスによる阿片戦争の痛ましい教訓を受け、幕末の知識人たちや幕府の指導者たちは、世界情勢を正確に理解しつつ冷静な判断を下しました。それは、単なる偶然ではなく、周到な情報収集と先見性に基づいた結果だったのです。その中で特筆すべき人物が、アメリカの外交官タウンゼント・ハリスです。彼は日本に阿片を持ち込む案を毅然として拒否し、それを条約に盛り込むよう日本側に助言しました。この決定が、日本が阿片という「白い悪魔」に侵されることを防ぎ、のちの近代国家としての飛躍の足掛かりとなったのです。ハリスの言葉の裏には、彼自身の国家利益があったとしても、知恵としてそれを取り込む柔軟性をもった幕府の指導者たちが、日本を正しい道へと導きました。