江戸時代は小氷期と呼ばれる寒冷な時代と重なり、冬の寒さは現代をはるかに凌ぐ過酷なものだったと言われています。気温は最も寒い時期で現在より数度低く、隅田川や大阪淀川が凍り、江戸の町では積雪が2メートルに達した記録まで存在します。このような極寒の中、長屋で暮らす江戸庶民は、限られた資源を工夫しながら冬を耐え抜きました。庶民の住む長屋は、断熱性の低い木と紙で簡易的に造られており、隙間風が吹く寒さをしのぐのは容易ではありませんでした。家全体を暖めることは不可能だったため、「火鉢」という暖房器具が重要な役割を果たしました。この火鉢は炭を燃やして熱を生み出し、湯を沸かしたり簡単な調理を行うことができる万能な道具でした。引き出し付きのタイプもあり、火鉢の熱を利用して食材や煙草を乾燥させることも可能でした。