私は久代、60歳の裁縫師です。夫を亡くしてから、息子の大木を針一つで育て上げました。今年、息子は大手銀行の内定を手に入れ、私は心を込めて内定式用のスーツを作りました。しかし、内定式で杉本部長が「貧乏臭いスーツ」と嘲笑、周囲も同調しました。それでも大木はひたむきに働き続け、半年後、彼の誠実な仕事ぶりが社長の長谷川氏に認められました。表彰式で大木は壇上に立ち、「母の作ったスーツに誇りを持っている」と語りました。会場は静まり返り、真っ先に拍手を送ったのは長谷川社長でした。その後、杉本部長の不適切な発言が社内に広まり、彼は他部署へ異動となりました。ある日、大木が「あのスーツをまた縫ってくれ」と言ったとき、初めて涙が止まりませんでした。報われたのはただのスーツではなく、私の人生そのものでした。