俺の家は、かつて俺の稼ぎで回っていた。父は病床に伏し、兄は結婚して家を離れ、母は体調が悪く、家事や生活全般の面倒を俺が見ていた。リモートワークで時間にも余裕があった俺は、母のことを嫌いではなかったし、無理してでもこの生活を続けようと感じていた。しかし、ある日突然、俺の生活は一変した。電話が鳴ったのは兄からだった。彼の一方的な言葉に驚き、俺は何も言えなかった。兄は、俺が家に住み続けることに不満を持ち、「お前は家を出て行け」と告げた。家計を支えている俺に、突然の追い出し命令。理由は、俺が働かずに家に居続けることが「情けない」と言われたからだ。兄は、母の面倒を見るのは当然だと語ったが、その言葉に俺は冷静でいられなかった。家に金を入れ、母の借金も肩代わりしてきたのに、そんなことを言われる筋合いはなかった。結局、俺は家を出ることを決意した。引っ越しの日、兄は家電が次々と運ばれていくのを見て驚愕していた。すべては俺が買ったものだし、持ち出すのは当然だ。俺は新しい生活を始め、気楽に一人暮らしを楽しんだ。数ヶ月後、兄から連絡があった。金銭的に困窮していると告げられたが、俺は冷徹に答えた。彼が家計の問題をすべて押し付けていたことに気づき、もう二度と関わらないと決めた。母を支えているという言葉が虚しいことに気づいたのは、まさに俺が引っ越した後だった。母を助けるための努力は無駄になったのだろうか？いや、これが兄夫婦への制裁だと心の中で納得していた。