母が亡くなり、兄と私は両親を失った。葬儀では兄が形式的な喪主となり、葬儀屋にうまく扱われる様子に私は助言を試みたが、兄は取り合わず、恥をかいた。遺産の話になり、私は全てを放棄すると決意を示した。「兄さんがお母さんを最期まで見たんだから」と言うと、兄はほっとした表情になった。兄は父の甘やかしで働かず、遊びほうけていた。母も兄に土地を売り、お金を渡してしまった。私はこのまま兄と共に沈むつもりはないと考え、母が亡くなったのを機に新しい生活を求めて逃げることを決心した。バッグひとつで新しい人生を始めた私は、幸せを見つけ家族を持った。兄のことは忘れていたが、母の夢を見て心が動かされ、実家へ行ってみた。そこで兄がすべてを失っていたことを知り、本当に逃げてよかったと心から思った。過去の決断は正しかったのだと、改めて感じる日となった。