両親が私の幼い頃に離婚し、母方の祖父母に育てられてきた。祖父母が亡くなった時、私はすでに二十歳を超えていて、母から「今更親子ごっこもないだろう」と言われ、それ以来一人暮らしを続けていた。母も四十代で亡くなり、一人で暮らしていた私を訪ねてきたのは見知らぬ女性だった。その女性は、亡くなった私の父の再婚相手で、相続の手続きをしたいという。複雑な気持ちの中、彼女の話を聞くと、父には私以外にも弟がいることが明らかになった。父とは一度も会ったことがなく、彼の顔すら知らない。しかし、二十歳までの養育費はきちんと払ってくれたらしい。父の写真を一枚だけ求め、その日は帰ってもらった。数日後、指定された施設で再度会い、税理士を交えて手続きを行った。初めて会った弟は、まるで他人のようで感動的な対面はなかった。手続きが終わると、彼らに見送られつつ帰途についた。家で封筒から取り出した古びた写真には、自分に似た父の姿があった。なぜ今まで会いに来てくれなかったのかは知る由もないが、父が残した財産は私の新しい生活の助けとなるだろう。この先の人生がどうなるかわからないが、感謝の気持ちだけは心に刻んだ。