私と夫の静かな生活が崩れたのは、あの日のことでした。65歳になったばかりの私は、長年連れ添った夫の顔を改めて見つめ、“愛している”と伝えたくなりました。「久しぶりに抱きしめてほしい」とお願いした時、彼の表情が驚くほど変わりました。夫は私を愛していないのでは、と不安になり、その夜、私の思い違いであることを願って言葉を続けたのです。ところが夫は、もっと驚くべきことを告白しました。「実は僕は、男性に興味があるんだ」と。この告白は、まるで心にハンマーを振り下ろされたかのような衝撃でした。結婚生活の間、互いの愛を確認できたことがなかったわけではありません。その記憶が私を支えていました。夫が私を大切に思ってくれていることは事実だと信じています。しかし私たちは、新しい形の関係を模索しなければなりませんでした。今では、夫との関係を以前よりも親友のように感じています。この新たな一歩を踏み出すことで、心にわずかですが、光が射したのを感じています。