昭和天皇の訪問がまだ心に残る、その感動の秘話が語り継がれている。佐賀県の院通時において、昭和天皇が訪れた際の出来事だ。このお寺には、戦争で親を失った引き上げ孤児や戦災孤児が生活していた。天皇が小さな部屋に入ると、一人の女の子が二つの位牌を抱えて座っていた。彼女と天皇の間で交わされた言葉は、涙を誘うものだった。「お父様とお母様の遺灰です。父はシベリアで戦死し、母は病を患い亡くなりました」と女の子は話す。さらに「父も母も仏様になりました。だから寂しくありません」と微笑んだ。この言葉に心打たれた陛下は、女の子の頭を優しく撫で、「お幸せに、元気でね」と声をかけた。その瞬間、女の子は思わず「お父さん」と呼び、そして見上げると、陛下の目から大粒の涙が静かに流れていたのであった。この情景は、昭和天皇の優しさを物語る感動の一幕として歴史に刻まれている。