35歳の時、職場で出会った同い年の女性、花江と結婚した。その時、彼女には6歳になる娘、優香がいた。彼女の最初の夫は病気でこの世を去っており、優香は実父をとても慕っていた。だからか、彼女は新しい父親である俺に心を開こうとしなかった。休日に遊園地や漁港に連れ出しても黙ってついてくるだけだった。優香が10歳になると、彼女は演劇に夢中になり、とある劇団に所属するようになった。俺と花江は、いつも優香の芝居を見に行き、終わった後にはおいしいものを食べに行くのが常だった。しかし、彼女が中学生になる頃、花江の様子が変わり始め、ある日、離婚を告げられる。彼女には新しい人ができたらしい。優香も母親について行く決心をしたと言われ、俺たちは別れを決めた。10年後、ひとり気ままに生活していた俺は、偶然テレビで懐かしい劇団の舞台を目にする。その舞台に、成長した優香が出演していた。感動で胸が詰まり、その日の舞台には行かずにはいられなかった。観客席で緊張しながらも、成熟し美しく成長した彼女の演技に驚き、涙があふれる。そして、劇が終わった後、優香が照れくさそうに微笑みながらお礼を言ってくれた。あの10年前の一言が二人を再び結び付け、親子の絆が再生される瞬間だった。