「おまえも、家族だ」――それが、長嶋茂雄が息子・一茂に残した最後の言葉だった。生前、商標権や記念品を巡る確執で断絶していた父子。雑誌連載で「二度と会うことはない」と明言していた一茂に、茂雄は死の間際に一通の手紙を託していた。そこには、遺産放棄を宣言していた息子への怒りでも憎しみでもない、ただ“許し”が綴られていた。しかし一茂は、その言葉を静かに拒む。財団設立、資産整理、親族を除いた理事構成——ミスターが最後に選んだのは「家族ではなく、未来」だった。絶縁の果てに交わされた、たった一度の対話。その深すぎる溝は、もう二度と埋まることはないのかもしれない。