横須賀線――首都東京と神奈川県を結ぶその路線は、大都会を貫く重要な交通網の一つ。しかし、この路線には奇妙な現象が隠されています。東京や横浜を経由する中心区間は利用者が多く、列車の本数も充実していますが、一歩郊外に足を運び土俵を過ぎた途端、様子は一変します。久里浜まで続く末端区間は閑散としており、本数もぐっと減少。まるでローカル線のような風景を見せます。三浦半島を代表する都市の一つである久里浜が終点でありながら、利用者が少ないその理由は軍事的な背景にあります。横須賀線は元々、軍事輸送を目的に敷設され、地形上の制約から都市中心部を避けて駅が作られました。その結果、多くの駅が使い勝手の悪い位置に配置されることに。この状況に追い打ちをかけたのが並行する京急線。京急線は直線的なルートで利便性を追求し、スピードが速く、運賃も横須賀線より格安。そのため、多くの利用者が京急線を選択し、横須賀線の末端はひっそりと静まり返ることとなったのです。地理的構造が与えた影響と、利便性の追求が生み出した利用者の選択。それが横須賀線の末端区間に人がいない理由なのです。