観光シーズン真っ只中、僕の小さな民宿に現れたのはボロボロのおばあさんだった。「物置でいいから、休ませてもらえないでしょうか?」と、その頼りなげな声が玄関先で響いた。忙殺される日々の中で人手に悩んでいた僕には、考えもしなかった展開だった。「接客を手伝ってくれるなら…」この思い切った交換条件が、予想以上の結果をもたらすことになる。おばあさんの名はゼッちゃん。彼女の明るく、的確な接客は、あっという間に常連の心を掴み、夏の民宿に珍しい活気をもたらした。おばあさんが来てくれたことで、僕の心にも変化が訪れる。そして、大切な思い出が呼び起こされた。その夏は、私にとって特別なものとなり、今の幸せにつながる大切な出来事として胸に刻まれた。これらの出会いを今でも思い出しては感謝する日々。人生が変わる瞬間は、意外と日常の中に転がっているものだと実感している。