1991年、東京で発覚した前代未聞の身元偽装事件。心臓外科医を名乗り、5年間穏やかな家庭生活を送っていた男性が、死亡後にその名前も経歴もすべて偽物だったことが判明する。さらに調査を進めると、20年前に失踪した別の妻の存在が浮かび上がり、男が歩んできた謎に包まれた人生が明らかになっていく。医師という理想の姿を演じ続けた男は一体何者だったのか。なぜ別人として生きる道を選び、過去を捨て去ったのか。残された偽造書類や大量の小説原稿、そして最後に残した言葉から、人生をやり直そうとした一人の男の苦悩と、人が「自分自身」である意味を問いかける物語が浮かび上がる。