兄の結婚式で、音大卒の新婦にピアノを弾かされるよう強要されるとは思ってもみなかった。俺、中卒でフリーターなだけに、会場の人々も驚いた様子だ。「あんたみたいなクズのピアノを聴きたいわ」という新婦の言葉に、最初は戸惑ったが、父の「啓太の演奏を聴いていると元気が出る」との言葉を思い出した。ピアノの前に座ると、不思議と気持ちが落ち着いた。結婚行進曲から始め、J-POPのメドレーへと流れるように弾くと、最初は静かだった会場内が徐々に盛り上がっていった。そして、メドレーの最後にお馴染みのドラマ主題歌を効果的に挿入。子どもたちも大人も立ち上がり、拍手喝采を送ってくれた。この演奏がきっかけで、なんと兄は結婚を取りやめたらしい。驚きの展開だけど、この経験を通じて、家族との絆が深まった。俺の演奏が、聴く人を少しでも元気にできたなら、それだけで嬉しい。これからも、音楽を通して自分らしく生きていこうと思う。