青山学院大学の原晋監督が、かつて駅伝部の再建を目指し、周囲から「アイツはやめとけ」と反対された選手をスカウトしたエピソードは、彼の指導哲学を象徴するものだ。箱根駅伝本選に出場できなければ解雇という三年契約の最終年度、監督は焦るあまり持ちタイムの速さだけを基準にスカウトを行った。しかし、結果としてチームは崩壊寸前に陥った。その時に得た教訓こそ、人間性を重視したスカウト基準への転換だった。スカウトされた選手たちは練習規律を守らず、態度も悪く、次々とチームを去っていった。その経験を経て原監督は「私は君を取ってやったとは思わないから、君も来てやったとは思わないでほしい」という言葉を掲げ、対等な関係を築くことを信条にした。また、ただお願いするスタイルを廃止し、「頑張らない君を叱ることはしない。私の仕事はあなたが頑張れる環境を作ることだ」と語り、メリットが互いにある関係を強調した。