西宮のおばさんが清太と節子を見送りしたその瞬間、彼女の胸中には複雑な思いが渦巻いていた。表向きは「これで少し楽になる」と安堵する気持ちがあったかもしれない。しかし、彼らの幼い姿が徐々に見えなくなっていくにつれ、彼女の心には罪悪感と心配が静かに忍び寄っていたのは明白だ。「自分の家にいるより良い生活ができるかもしれない」とおばさん自身に言い聞かせながらも、その背景には「彼らを追い出してしまった」という後悔の念が隠されていたのだろう。節子の無邪気な笑い声が響いた時、それはおばさんに彼女らの純粋さと行く先の厳しさを同時に思い知らせるものとなった。