ファミリーレストランの店長であるシンジは、特注スーツに水を掛けられたと怒鳴る男と対峙していた。その男は「オーダーメイドスーツだ、百万円するんだぞ!弁償しろ!」と叫び、店内は一時騒然となる。しかしシンジは冷静に、男に向かって「あと数分したら本物のヤクザが来ますから」と静かに言った。男は一瞬顔を曇らせたが、疑わしげに言葉を返す。その時、後方から木村という名の初老の男性が現れ、「いつも妻と娘がお世話になっている」と挨拶をする。実は彼は街でも名を馳せるヤクザの組長、そして妻である菊野は常連客だったのだ。驚いた男はその場で土下座をし始め、取り乱したまま連れて行かれてしまった。それ以来、問題の男は店に来なくなり、シンジのファミレスは再び活気を取り戻した。そして菊野さんは、毎週娘のためにおもちゃを買いに来るようになったが、シンジは未だに男の行方を聞く勇気が出ないでいた。