法事の席で、私だけが台所で冷や麦を食べることになった。 朝四時から一人で立ち続け、親戚二十人分の料理を作ったのに、義母はお盆を隅に置き、「座敷は狭いから、ここで食べなさい」と冷ややかに言った。広間では高級な和牛や刺身を囲んで笑い声が弾み、私の胸だけが静かに冷えていった。そこへ中学生の息子・翔太が入ってきた。私の冷や麦を見るなり顔色を変え、そのままお盆を持って広間の中央へ進む。そして親戚の前で、はっきり言った。 「朝四時から作った母さんが、台所の床で冷や麦を食べるのが、この家の当たり前なの?」 座敷は一瞬で静まり返った。翔太は続ける。 「母さんは、僕の大事なお母さんです。便利屋じゃない」 夫も黙って箸を置き、「もう二度と、母さんをこんな目には遭わせない」と立ち上がった。私は息子の言葉に、涙が止まらなかった。